大畑亮介

硬膜外麻酔とは

硬膜外麻酔法(こうまくがいますいほう)とは、背骨の中にある「硬膜外腔」(こうまくがいくう)というスペースに細い管(カーテル)を挿入し、そこから局所麻酔薬や鎮痛薬などを投与する麻酔です。下半身の感覚を麻痺させることができます。(リトリート編集部:大畑亮介)

無痛分娩での使用

硬膜外麻酔は、無痛分娩のやり方として現在最も一般に普及しています。

硬膜外麻酔をすると、妊婦の陣痛を軽減もしくは完全に取り除いてくれます。子宮や子宮頸部から痛みの信号が脳に伝わるのを途中で麻痺させることによって、痛みを感じないようにします。

追加投与で鎮痛を維持

最初に薬を投与してからおよそ10分から20分で効果が現れる場合多いです。さらに薬剤を追加投与することによって赤ちゃんが生まれるまで十分な鎮痛が維持できます。

以前より麻痺が軽減された

硬膜外麻酔による無痛分娩は、1950年代から徐々に普及しました。とくに1990年代後半から2000年代にかけて飛躍的に発展しました。さまざまな工夫により安全性と有効性が向上しただけでなく、運動麻痺が少なくなりました。多くの産婦が分娩経過中も自由に歩けるようになったのです。

麻酔の効果

硬膜外麻酔が効きはじめると、お腹からつま先までまったく感覚がなくなったり、感覚が鈍くなったりします。そして子宮が収縮するたびに締めつけるような感覚はするものの、痛みは感じなくなります。

どの程度感覚が麻痺するかは、使用された薬の種類や濃度、量により異なります。

硬膜外麻酔によって「感覚」は麻痺しますが、「感情」まで麻痺するわけではありません。ほとんどの女性が陣痛からは解放されますが、分娩をしている実感は味わえます。

エネルギーが温存できる

痛みがなくなったからといって、ストレスがなくなるわけではありません。しかし、硬膜外麻酔により痛みから解放されたおかげで休息をとることができ、分娩の次の段階にそなえて、精神的にも肉体的にもエネルギーを温存できたと、多くの女性が感じています。

硬膜外麻酔が適している妊婦とは

硬膜外麻酔による無痛分娩に適している妊婦(産婦)とは、一般的には以下のような条件に当てはまる人だと考えられています。

  • できるだけ陣痛に苦しむことなく出産したいと強く望んでいる。
  • 赤ちゃんが巨大児で難産が予測されている。
  • 痛みが出現するたびに注射をするよりも、継続的な鎮痛を希望する。
  • なんらかの理由で帝王切開になる可能性が高く、かつ硬膜外麻酔により帝王切開の麻酔管理が可能な場合
  • 出産がのびのびになっているが、なるべく帝王切開を避けたい。
  • 子宮口が開かないので陣痛が停止しており、産道の弛緩が必要な場合
  • 休息や睡眠が必要だが、陣痛のために休息や睡眠が妨げられている場合
  • 子宮の収縮を促進するためにオキシトシンが使用される場合

硬膜外麻酔が適さないケース

以下の場合は硬膜外麻酔が適さないと考えられています。陣痛がはじまるまえに、産科医や麻酔科医に伝える必要があります。

  • 血液の凝固障害があったり、もしくは抗凝固薬を服用したりしている場合
  • なんらかの神経疾患がある場合
  • 過去に腰椎の外科的処置を受けたことがある場合
  • 薬剤を用いた無痛分娩はどうしても避けたい場合